3年前の7月2日に撮影したDBの写真(89才):当時はまだ元気で、雨が降っても風が吹いても週5日LANセンターに出社していました。
皆様のお手元に「pd普及の会支援のお願い」レターが届いていると思いますが、この中で「pd普及の会とGEPECの強固な連携」が述べられています。そこで、今回も再度GEPECのねらいは何か、またGEPECとpd普及の会の関わりについて考察したいと思います。
GEPECの目標:
毎月どこかで歯科関連のセミナーや講演会が開催されています。それらの多くは、KB1,2,3の分類でいうと、Kb2.2(治療手順)、 2.3(テクノロジーの機能)に関する新情報の提供や実習ですが、特定の製品の販売促進が抱き合わせになっている事が珍しくありません。企業が主催・共催するセミナーは製品が売れればMission Completedであって、購入者=歯科医師の診療がどう変わったのか、治療のoutcomeは改善したのか、変化なしなのかは、考慮の外側(out of scope)です。(注:このout of scope という表現は日本の企業もよく使うようになってきたように感じます。「そんなの関係ない。」というより“聞こえ”がいいからかもしれませんね。)また企業とは独立したスタディ・グループや歯科学会も、色々なセミナーを各地で開催していますが、やはりセミナー開催が end pointという感じが否めません。
他方、GEPECは「研修屋さん」ではありません。人的リソースが極めて限られているので、Kb 2の分野は out of scopeとしています。新規の治療手順やテクノロジーについて、果たして適応があるのか、導入すべきなのかというKb2の問題はヘルスケアにとって非常に重要ではありますが、世界中の専門家たちが参加して行うコンセンサス会議ですら統一見解を出せない現状において、GEPECが単独で取り組むことはとうてい無理だからです。
GEPECのねらい(目標)は、pd環境におけるpdケアの実現です。
まず歯科をモデル・ケースとして、ヘルスケア全体にpd環境、pd診療を普及することが究極の目標です。それにはpd環境とpdスキルの普及は「車の両輪」となるべきものだと思います。
英語での情報発信:
前述の「pd普及の会支援お願い」に添付されているGEPEC理事長Dr Doughertyが述べられているように、GEPECは今後、DBが残した知的遺産を継承・普及し、次世代に伝えていくために、pdに基づく研修や、pd環境におけるpdケアが医療従事者に多大な恩恵をもたらす事、ひいては患者に恩恵をもたらすものである事を研究や実践によって証明し、世界に情報発信していく必要があります。pd普及の会の先生方は長年にわたって多くの貴重な臨床データや資料を積み上げてこられましたが、英語で発信しなければ世界には伝わりません。生前DBは母国語への依存度を最小限にとどめるために数字用語を開発し、世界で英語がde facto standardとして使われている事を苦々しく思っていました。でも、皮肉な事に、数字用語の価値や有用性を大勢の人々に理解してもらうためには、英語での発表・発信が不可欠です。GEPEC事務局では、最初の試みとしてpd普及の会の Mouth Clinician’s pd training courseで用いられるテキストの英訳に取り組んでいます。英訳した資料は8月下旬にGEPEC理事会(スカイプ・ミーティング)に提出され、検討される事になっています。テキストだけではなく、pd普及の会の研修カリキュラム(英語版)がGEPECにおいて検討・洗練され、世界標準のpd研修カリキュラムとして認定されれば、世界に散らばるGEPEC理事の担当地域で、pd研修コースを拡大させていくための重要な第一歩となるでしょう。(Dr Doughertyのレターの引用:pd普及の会には多言語での効果的かつ効率的な研修カリキュラムが必要です。)
Engineering分野の活動:
GEPECのもう一つの課題は、Engineering分野での活動です。これについて「pd普及の会支援のお願い」の中でも言及されています。(引用)「ふと気づくと検証を受けたpdインスツルメントが企業の都合で廃版となり、pd適合機器のバージョンが更新されるたびに、曖昧な方向に向かっていることも散見します。(略)歯科の技術の変化に伴い、世に出る目新しものにはpdからかけ離れたものも数多く見られます。」GEPECの最初の E:Engineeringが意味しているのは、まさに、このようなF3の問題をメーカーに提起し、解決を図る事、すなわちユーザーの声をじかにメーカーに届けるために、F3(診療台や機能物)の規格を評価・分析し、開発の提案をメーカーに提示する事です。DBが健在だった時代には、どのメーカーであろうと、問題を見つければ当該メーカーの製造技術部門に電話を入れて、主任技術者と話し合う場を持つという“強引な方法”を取っていましたが、技術者の方々には感謝されていました。(難色を示すのは、いつの場合も営業部なんですね。)。DBは「エンドユーザーとエンジニアをつなぐ“かけ橋”となるということは、GEPECの大きな狙いの一つである。私はGEPECとpdpグループが密接な関係を持つことによって、メーカーに対するエンドユーザーの影響力が増すことを願っている。」と述べていました。DBが逝った今、国内においてはpd普及の会の先生方に継承して頂きたい課題です。
新たに発足したMouth Clinician’s Training Coursesに加え、これらの分野での皆様のご検討を祈念しています。微力ながらGEPEC事務局は出来る限りのお手伝いをさせて頂きます。GEPEC事務局 三明