GEPEC便り 5月号 no.2 ーなぜデンタル・チェアはダメなのかー

今回は、今年2月タイ、チェンマイで開催されたGEPEC Global Meetingにおいて発表されたDr David Blancのプレゼンテーションの抜粋をご紹介します。

Dr David Blancは歯科医師であり、理学療法士、オステオパシーの療法医であるという珍しい経歴をお持ちのフランスの開業医です。Dr Beachと個人的な面識はなく、日本で行われた外国人向けのpdコースを受講された事もないのですが、数少ないDrビーチ関連の文献を読まれたのが、理学療法士の立場からDrビーチが提唱するpdのアプローチに関心を持つに至ったきっかけだと伺いました。またフランスにはDrビーチとも親交があったDr PierreFarreGEPEC理事)がいらっしゃるので、現在は二人でpdの普及活動を主宰されています。「背板の倒れるチェアが何ゆえに患者にとってマイナスなのか、pdではないのか」という点について、Drビーチは、「自分の体の位置決めは、自分で行う=セルフ・コントロールが最も自然であり、身体障害のある人にとっても最も安心である」と主張してきましたが、Dr Blancは同じ事を人体の生体力学の側面から解説されたのが、私にとってはとても新鮮な切り口に思われました。先生の発表は動画、アニメーションを含むPPTのため膨大なサイズになる事と、会議中の録音の音質が悪く書き下ろせなかったために、スライドのみ、私の独断で枚数を減らして抜粋しました。関心がある方は、Dr David Blancでネット検索して頂ければ、先生の研究論文が出てきます。Websitewww.ergonomie-dentaire.com/en/ です。

Dr Blanc slides

 Dr Blancは術者や患者の身体のbest conditionsという観点からpdをとらえてこられました。スライドの「ノート」にも注釈をつけましたように、フランスで勢力的にpd普及活動を行っておられますが、「私たちがフランスで行っているのは、日本で行われているような「教育」(pd研修コース)ではなく、その前段階としての「普及」活動だと考えている、また、口腔内の精密な治療を行う上でのpd条件については、私自身、これからもpdコースを受講して勉強していきたい」とおっしゃっていました。

追記:

 ハムストリング(hamstring femoris):

 膝が延びている時は 伸展(緊張); 膝が曲がっている時は、弛緩

 

 

 

 

 

 

下の 図(上)デンタル・チェアでの仰臥位:大腿直筋 伸展(緊張)、腰椎前湾

下の図(下)テーブル・タイプ診療台での完全な仰臥位:大腿直筋 弛緩

 

図説)ハムストリングは、腰から膝までの下肢後面を通っている。腰が曲がり膝が伸びている時、ハムストリングは伸展(緊張)する。従って下腿(膝から下)を伸ばしたままでは、腰部で代償しない限り、座位を取ることはできない。そのために、デンタル・チェアは膝を曲げられるように角度(膝折れ)が付いている。

 しかし、デンタル・チェアのこの特徴は、仰臥位の際に大きな欠点を生じる。ハムストリングの拮抗筋である大腿直筋は、腰から膝までの大腿部前面を通っている。大腿直筋は、膝が屈曲し、腰が伸展している時に伸展(緊張)する。従って、膝が屈曲したままであれば、腰椎前湾という苦痛な代償なしに完全な仰臥位を取ることはできない。したがって下肢のサポートは平らでなければならないのである。このような理由から、デンタル・チェアは仰臥位とは決して相容れないものである。