GEPEC便り 4月号 no1

今月から「GEPEC便り」とさせて頂きます。皆様にGEPECの活動をご報告させて頂く事で、pd普及の会との懸け橋になる事ができれば幸いです。

DBは生前「自分が生涯をかけて開発・考案してきた知的財産は全てGEPECに委ねる」と申しておりました。そのDBが残したpdに関する情報をさらに発展させ、世界に発信するというGEPECの目的に是非ご協力頂きたく思います。

*GEPEC ニュース:2018年4月

4月13日今年3回目のGEPECのSkype理事会が行われ、フランスのDr Laffontと日本のセティシャイ先生が新理事として承認されました。

その結果、理事会は7名になりました。(理事長Dr Mike Dougherty(米), Dr Wolf Neddermeyer(独), Dr Pierre Farre(仏), Dr Jacques Verre (インド)、石田先生、Dr Jean-Michel Laffont(仏)、セティシャイ先生(日本))。

GEPECとpd普及の会の関係がよく分からないというご指摘を頂きましたので、今回は2006年2月に発信した内容を再掲載させて頂きます。GEPECについて、是非ご質問やご意見をお寄せください。

*GEPEC設立の動機と契機:(2006年2月3日配信)

今までDrビーチを軸として設立されてきた、HPI、APLO、OMUA、世界pdヘルスケア・ソサエティを始めとする国内の様々なスタディ・グループは、pd診療の実践と、臨床技術の研修に焦点をあてた活動をしてきました。国内ではモリタ社がテーブル・タイプの診療台(HPO、Feel21、Feel Easeなど)を製造してきており、1960年代のスペースラインCU1開発以降、Drビーチ自身がモリタ製作所の製造技術部門と長きにわたり密接な協力関係を結んできたので、ユーザー・サイドにたって診療台や機能物の仕様を評価・分析し、あるいは開発の提案をメーカーに提示する組織の必要性は表面化する事なく歳月が流れた感があります。しかし近年には、pdインスツルメントの入手が困難になったり、知らない間にメーカーが仕様を変更するという事態が生じてきましたし、海外では、pd診療の実践を希望しても、診療台が手に入らない(あるいは法外な価格なので買えない)という状況が慢性的に続いてきました。海外では、モノ(pd診療台)がないから、研修もできない、研修ができないからpdコンセプトの普及も効果的には行えないーという「ない、ない尽くし」の状況にあったわけです。

GEPEC理事長のドーティは開業医ですが、30代の前半に診療の継続が危ぶまれるほどの重度の腰痛に悩まされていました。筋骨格系機能障害の大家であるDr. Travell(もう亡くなりましたが、故ケネディ大統領の主治医として著名な方です)に診察してもらったところ、「職業を変えるか、治療中の姿勢を変えるかしないと直らない」と助言され、診療方法を変えるにはどうしたら良いのか模索していた時に、pdコンセプトとHPOに出会いました。それ以来20数年、Drドーティは個人レベルでpdの普及に努めてこられました。Drビーチに師事するため、何度も診療所を2週間閉じて、経費は自己負担で来日されました。このような経緯の中で、今pdの普及を目的とするグローバル組織を立ち上げなければ、Drビーチの命が尽きた時にはpdの概念も日本国内に留まり、絶えてしまう-という危機感に基づき、インターネットの時代といわれる今日、ネットワークを土台にして、global collaborativeを設立する計画を提案されました。これにDrビーチも全面的に賛同し、二人がfounding co-chairmen(創立共同理事長)となりGEPECは生まれました。一言でいうと、GEPECの目標はpd patient care in pd clinic (pdクリニックにおけるpd診療)の推進です。従来の活動との大きな違いは、研修コースの提供によってpdによる治療法を普及させるのにとどまらず、さらに一歩踏み込んで、pdクリニック(特にpd診療台=テーブル・タイプの診療台)の確保と普及を目指しています。「行動は環境に制御される」と言われるように、最終的にはpd環境がなければ、pd診療を維持することはできないという考えと、またpd診療台に対するユーザーからの需要を増大しなければ、メーカーは動かない(→ごく一握りのエリート歯科医師にしか売れない診療台にとどまるのであれば、採算ベースに乗らない)という洞察に基づいています。GEPECには、ユーザーの声をじかにメーカーに届けるために、診療台や機能物の仕様を評価・分析し、あるいは開発の提案をメーカーに提示することを役割とするEngineering Panelが設けられています。6名の理事の中で、Drドーティと石田先生は開業歯科医師ですが、他の3名は政府主任歯科技官、歯学部長、ISO歯科部門議長など、政府、大学、国際組織で要職を担った実績のある方々が選任されています。(注:2005年GEPEC設立以来、6名の創立理事のうち何人かの方は逝去、健康上の理由などで交代・変更されてきました。)

GEPECとpdpグループの連携の意義について述べたDBのコメント:(これは、DB便りの3月号でご紹介しました。2006年4月発行APLOの機関誌Vol22に掲載のDB講演録から抜粋)

「エンドユーザーの先生方が企業の製造技術部門のエンジニアと直接話をしたり、情報をフィードバックしたりする機会はほとんどないに等しい。通常は、医院に出入りしている営業マンにメーカーへの要望や苦情を言って、社内でエンジニアに伝えてもらうというルートになっているが、営業部の判断によるフィルターがかけられるので、必ずしも正確に技術部門に伝わるわけではない。エンドユーザーとエンジニアをつなぐ“かけ橋”となるということは、GEPECの大きな狙いの一つである。私はGEPECとpdpグループが密接な関係を持つことによって、メーカーに対するエンドユーザーの影響力が増すことを願っている。」

*Q&A:

Q1:GEPECとpd普及の会との関係はどういうものか?

Drビーチは、pdpの会も、GEPECという名のGlobal Collaborative の一員として、共通の目標を達成するための活動に参画して頂きたいと考えています。日本国内での長年にわたるDrビーチと先生方の親しい交流や活動だけに焦点をあてると、GEPECの必要性はよく見えてこないかもしれません。GEPECはグローバル組織です。「世界各地で、様々な組織がGEPECに参加し、共通の目標達成のために、協同作業に参画する」-という文脈の中で、pdpの会の存在を考えて頂ければ、なぜ今、pdpの会もGEPECに参画すべきなのかは明らかになると思います。

pd普及の会は、GEPEC直轄の下部組織ではない、独立した組織です。だからこそcollaboration(協同作業)なのです。「われわれはpdの実行部隊である」という認識を持っておられるのはpdpの会の先生方に限らず、Drビーチの門下生あるいはシンパの先生方が、世界各地に散在しておられ、(日本のように組織化されてはいないので)各々何らかの限界、制約を抱えながらも、pd普及の活動を連綿と続けてこられてきました。でもそれだけでは十分ではないということは、「今までの結果」が物語っています。具体的に、データの収集や何をどう普及させてゆくのかという戦略を設定し、活動を協同作業してゆくのがGlobal Collaborative です。日本を含む世界のために働くのが global collaborativeです。DrBeachは過去半世紀に亘って日本を活動と生活の拠点としてきましたし、さらにモリタ社と協力関係を結んできたために、組織化の面でも、ハード(pd診療台とpdインスツルメント)の普及の面でも、世界中で日本が最も進んでいます。そういう意味で先生方には「GEPECから何をもらえるか」というよりも「何について共同作業をするか、何を世界と共有できるか」というスタンスで、「pdクリニックにおけるpd治療の推進」のために、作業と責任を分担して頂ければ幸いです。

備考:

Global Collaborativeという表現は先生方にとっては耳新しい表現かもしれませんが、近年国際会議で、主として医学分野の研究・開発の分野において、よく見かけるようになりました。共通の目標に向かって、各々独立した組織が共同作業を行うために資源(人材、資金、施設など)を分担して供出し、成果を共有するための“協定“といえます。最も一般的な事例としては、ガンの新規治療薬について世界の多数施設で臨床治験を行い、グローバルなデータベースを構築するために、複数の治療センター、臨床検査のラボ及びデータ解析センターがGlobal Collaborative を結成する-という例をあげる事ができます。(参画組織に、その得意分野にそって、各々異なる役割が課せられます。)

従ってGlobal Collaborative というのは、双方の友好関係・交流を促進するための姉妹校協定などと違って、特定の目標・目的を掲げ、参加組織は作業と責任を分担するというのが特徴です。ですからCollaborative に参画する組織は、各々が独立した組織であり、各自が別個の意思決定機関を持っています。多国籍企業の本部GHQと各国の子会社という関係でもなければ、日本歯科医師会と各地の歯科医師会のような上部-下部組織という関係でもありません。

Q2 ローカルにおけるpd実行部隊として組織化されたpd普及の会があるならば、GEPECは個々の会員の組織化を必要とするのか?

(前述のコメントと重複しますが)Drビーチは、pdpの会に対して、「pdpの会員は、自動的にGEPECの会員となる」という位置づけにしてほしい、つまり組織としてGEPECに参画してほしい-とお願いしています。もし組織として、この決定がなされないのならば、代替策として、個々の先生方に呼びかけるしかありません。ですから各会員の方々に個別に決定して頂くというのはあくまでSecond Choice です。 (備考:「個々の会員の組織化」という意味がよく分かりませんが、会員各人がGEPECに加入するかどうかを決定する-という意味だと解釈して、コメントをさせて頂きました。)